腸内フローラ移植
従来の薬物療法ではアプローチできなかった腸内環境の乱れに対して、腸内フローラを移植することによって、腸内環境の乱れに働きかける方法です。
腸内フローラ
腸内フローラ(Gut Flora)は腸内の花(?)。腸内にいる微生物の生態系が、まるでお花畑に見えることから腸内フローラと呼ぶようになったのです。簡単に言うと、腸内細菌のことです。
ヒトを含めて犬猫には多種多様な腸内フローラが存在します。細菌って言われると物凄く嫌な気もしますが、実は、良い子(善玉菌)もいれば悪い子(悪玉菌)もいて、どっちつかずの子(日和見菌)もいます。悪い子が増えて悪さをするだけではなく、「細菌たちの多様性(腸内フローラバランス)が低下して腸内フローラが正常に機能していない状態=腸内環境の乱れ」なのです。この乱れを整えることとして最近取り上げられ、流行っているのがまさに腸活で、腸内フローラバランスが健康維持に欠かせない働きをしているのです。
どうして、体の臓器でもない、ただの細菌に何ができるのかと疑問に思うかも知れませんが、腸から連想されがちな消化吸収の他にも、この小さな無数の菌たちは、宿主の体に重要な役割を果たしているのです。
消化・吸収をサポート
Digestion and Absorption
腸内フローラは、食物の消化と栄養素の吸収に関与します。特に、一部の微生物は食物繊維を分解し、短鎖脂肪酸(SCFA)などの代謝物を生成します。これらの代謝物は腸粘膜細胞にエネルギー源として利用され、栄養吸収をサポートします。
ビタミンの合成
Vitamin Production
一部の腸内細菌は、特定のビタミン(B群ビタミンやビタミンKなど)を合成します。これらのビタミンは、体内で必要な生理的プロセスをサポートし、栄養不足を防ぎ、宿主の健康に役立つとされています。
代謝の調節
Metabolism
腸内フローラの発酵による代謝産物の短鎖脂肪酸は、血糖値の調節、脂質代謝などにも影響を与えています。また、胆汁の再吸収も調節します。さらに、一部の腸内細菌はインスリンの働きにも関わっていて、肥満との関連性が明らかになっています。
免疫の調整
Immunomodulation
免疫の殆どは腸内に集中していて、腸内フローラは免疫システムの発達と調整に重要な役割を果たしています。正常な免疫機能には微生物との相互作用が不可欠で、T細胞の制御や免疫応答を調節し、免疫細胞の発育と活性化を支援します。
病原体の排除
Direct Inhibition of Pathogens
病原体の定着を阻止し、侵入する病原体を排除する役割を果たします。腸内フローラの不均衡は、病原体の定着による発病と関わっています。
脳腸相関
Gut-brain Axis
腸と脳は互いに影響し合い、腸内フローラは情緒やストレス応答に影響を与えるとされています(例えば、緊張するとお腹が痛いと感じる)。また、セロトニンと言った神経伝達物質の産生にも関わっていて、うつや自閉症、食欲など神経疾患との関連が明らかで、第二の脳とも呼ばれています。
移植について
1クール(3回)の単位で、数回繰り返して行います。
腸内フローラに直接アプローチ
浣腸による注腸で繰り返して移植しやすい
外科手術や事前措置は不要
腸内フローラ移植のイメージ
1回目
2回目
3回目
2~3日後
2回目より7日後